Knowledge Village教養・カルチャー > 日本文学 > 現代文学にみる“愛”と“性”

永井荷風 『墨東綺譚』

 年は二十四五にはなってゐるであらう。なか々々いゝ容貌(きりやう)である。鼻筋の通つた丸顔は白粉焼(おしろいやけ)がしてゐるが,結立(ゆひたて)の島田の生際(はえぎわ)もまだ抜上(ぬけあが)つてはゐない。黒目勝(くろめがち)の眼の中も曇つてゐず唇や歯ぐきの血色を見ても,其(その)健康はまださして破壊されても居ないやうに思はれた。(原文は総ルビ)


 永井荷風がこう描いて見せたのは,昭和12年の4月から6月にかけて「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」に35回にわたって連載された,...

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川端康成 『雪国』

 『雪国』の冒頭部にあたる「夕景色の鏡」「白い朝の鏡」が,それぞれ昭和10年1月号の「文藝春秋」「改造」に掲載された時,作品は伏せ字だらけであった。時節柄,官能的な表現は許されず,そういう部分は伏せ字とされたのである。もちろん,今日では国語の教科書にも掲載されるほど(とはいっても,それは冒頭部分だけであるが)<安全>な作品ということになっているが,なかなかどうして……

 ここで『雪国』の梗概を紹介するほどのスペースの余裕はないのでいきなり核心の場面の紹介に入ることになるが,冒頭の「国境...

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