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「県庁さん」の到来を待ち続ける人たち

「エリート」という言葉には,「高給取りの特権階級」だとか,「高学歴で,こちらには解らない理屈を振り回したりしてどうにも鼻持ちならない連中」だとか,そんなネガティブなイメージが世間一般にはあるように思われます。

実際,今日,地方出身の人が都市部で大学を卒業して,再び地元で学歴相応の就職をしようとすれば,いくつかの地方都市を除いて,たいていは地方銀行か県庁か,そのくらいしか選択肢がないという実態があります。

たとえば,映画の中で主人公の野村(織田裕二)が属しているK県庁のモデルである,香川県庁の場合を見てみます。香川県の平成17年の採用上級試験(一般 行政事務)では,申込者数429人に対し,最終合格者数は8人(!)で,競争率は53.6倍(!!)にもなります。数字だけではありません。「就職氷河 期」が長く続いたことから,受験者も必ずしもその地方出身者だけとは限らず,結果,受験者層のレベルそのものがこれまでより上がっていると見られており, 競争は熾烈を極めています。

もっとも,野村が受験したと思われる90年代前半は,最終合格者の数ももっと多く,倍率も半分強ぐらいだったわけですが,新卒市場では既に「就職氷河期」の兆しも見えていたはずで,厳しい条件には変わりなかったでしょう。

以上のことから,これらの業種には新卒者の中でも(平均的には)優秀な人間が採用されることになります。周囲から見れば,彼らはどうしても「エリート」的な雰囲気を持つことになるでしょう。

ところで,エリートはもともとフランス語で,厳密には,高い専門教育を受け,試験や訓練を通して選抜された,より高度な業務や任務に携わる人々を指しま す。そして,県庁職員には今後,この「本来の意味でのエリート」としての活躍が期待されているのです。というのは,内閣府・経済財政諮問会議の答申による 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)2003」に登場した「三位一体の改革」,すなわち国庫補助負担金縮減,地方交付税総額の抑制, 国から地方への税源移譲の3課題の同時改革の進展により,今後地方公共団体に求められる役割が大きくなっていくと考えられているからです。

まず国庫補助負担金が縮減され,地方に財源が移譲されるということは,これまで国まかせだった事案についても,地方に独自の政策立案能力が要求されること を意味します。また地方交付税が削減されるということは,財源不足の地方自治体にとっては財源の保障が失われることを意味し,行政効率の向上が最優先課題 となります。これらの懸案をこなしていく人材が,地方自治体には今後求められていくというわけです。

それにしても,映画の中での野村の振る舞いは,あまりにも現実離れしていやしないでしょうか?「世間一般に公務員のステロタイプはこんなものだ」というに しても,公務員としての行動はあまりに極端で,人物像としてはあまりに単純。映画を見ていると,「ひょっとすると野村は,誰かの妄想に現れた人物だったん じゃないか?」と疑いたくなるほどです。

しかし,もしそうだとすれば,その妄想の主はおそらくこの映画のヒロインである,高校中退にしてスーパーのパート店員,二宮あき(柴咲コウ)だったに違いありません。なぜなら彼女にとって野村こそが,彼女がその到来を待ち望んでいた「ヒーロー」だったからです。…

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