パートタイム・ブルース
日本の雇用者数の動向を中長期的な視点で見たとき、1997年以降男性の雇用者数が減少傾向にある一方で、女性の雇用者数は2000年以降増加傾向にあることが知られています。(実は近年になって男性は増加に転じ、女性は減少に転じているのですが、)
このことは何を意味しているのでしょうか?「男性によって占有されてきた社会が女性にも開放されつつあり、遅蒔きながらも先人の努力がようやく花開いたこ
との表れで、今後も引き続きこの傾向が弱められることがないよう注視して云々…」というわけではありません。これらは、「失われた10年」の結果としてあ
らわれた現象なのです。
基本的に年功序列型の賃金体系を持つ日本企業は、雇用者の高齢化が進むにつれて高コスト体質になります。この人件費増大に不況が重なり、これまで企業はコ
スト抑制のために新卒採用を控えてきました。しかし実際問題、新卒採用がなければこれまで新人がこなしていた仕事、すなわち相対的に未熟練労働の範疇に入
るような業務に人手が足りなくなります。そこで企業は、これを非正規雇用者、たとえばパートタイマーなどの採用で補ったのです。そして女性の場合、女性雇
用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は半数を占めており、男性の16%前後よりかなり高くなっています。
結果、日本全体の雇用者総数に占める「パート」の割合が高まったため、必然として女性の雇用者数が増加したのです。
つまりこの現象は、日本の労働市場において雇用の流動化が進展したことの反映なのです。
パートタイム労働者は、正社員と同じ仕事、ともすればそれよりも厳しい仕事をパートタイムの低賃金で任される場合がしばしば見受けられ、このことに不満を持つ人がかなりいます。
二宮あき(柴崎コウ)は、まさにそんな境遇にあるスーパー満天堂のベテランパート店員。なにしろパートなのに副店長、ベテランだからと「パートリーダー」
にも指名され、加えて、よくわからん理由でやって来た使えない公務員の教育係まで任されたのでは、「やってられない!」と喚き散らしたくもなるというもの
です。
「県庁さん」の職場の場合、仕事は細分化・専門化され、実は席が隣同士でも仕事の内容がお互いに理解できないということがままあります。結果、繁文縟礼、
割拠主義が横行し、私たちが県庁に問い合わせの電話を掛ければ「たらい回し」の憂き目に会うわけです(官僚制の逆機能)。
しかしこのような事態は、細分化・専門化を実現できるほどの高コスト体質が許されるような境遇でなければ実現し得ません。市場での供給過剰感が強く、生産
調整に伴って「コスト削減」という名の大幅な人員削減が行われがちな小売業のような業種では、慢性的に人材不足に陥って、1人があまりに多くの業務に関わ
るような事態になる場合があります。
結果、その職場では皆仕事が手につかず、「事勿れ主義」が横行することになるでしょう。満天堂の従業員も自分の仕事を顧みるので精一杯、閉塞感がそこかしこに漂い、通路も在庫品の山でまるで迷宮のよう(消防法違反)です。
終身刑に処せられた独房の囚人は、青い空を四角く切り取る窓に嵌められた鉄格子を切り落とそうと鋸を振るう、小さな天使たちを妄想するでしょう。では店員たちは、スーパー満天堂の憂鬱にどんな白昼夢を見たのでしょうか?

