ライブドアが残した善と悪
第一回でライブドアの経営手法、第二回でライブドア強制捜査理由について触れました。
まず、経営手法についてですが、株式分割による時価総額の拡大はとても斬新な発想で、よく考えられた手法だと、私個人としては感心していました。従来の株
式分割は1割無償増資程度が主流(例えば1,000株持っている人に、100株((持ち株の1割分))を割り当てる株式分割)でした。
それにもかかわらずライブドアは、第一回のコラムに書いたように、株式を100倍に分割(1株持っている人に99株を割り当てる((つまり、持ち株合計が100倍になる))株式分割)を実施しました。
この株式100分割を2度繰り返した結果、ライブドア株式の1株あたりの単価が極端に下がり、事件直前の段階では1株700円程度で買えるようになっていました。
700円となると、株式に少しでも興味がある方は投資してみようという気分になると思います。手数料は別途かかります(かからない証券会社もありま
す)が、700円だったら思い切って(いや、思い切る必要もない程度の金額なので)、買ってみようと考える個人投資家が多くなったのは事実でしょう。
また、従来の株式市場の常識で、株式の増資は1割程度だったものが、現在では2〜5倍の増資が主流になっています。この結果、多くの銘柄が投資しやすい金額まで下がり、現在の個人投資家の増加傾向に拍車をかけたのも事実です。
また、資本主義における株式が持つ意味を世間一般に周知させたのも、ライブドアのニッポン放送買収劇だったのではないでしょうか?
企業の敵対的買収は、アメリカでは日常茶飯事のようですが、日本では十数年前に、自動車部品メーカーの小糸製作所が、アメリカの某企業に株式を買い集められて以来、上場会社ではほとんど話を聞きませんでした。
ライブドアは、ニッポン放送の株を買い占め、結果的にはフジテレビとの提携に成功。これにより1,000億円を超える現預金が、ライブドアに入った と言われています。その他、楽天とTBSの問題など、株式市場に関するニュースが連日トップニュースとなり、ますます株式に対する関心が高まったものと思 われます。
実際問題として、長年経営活動を行ってきた会社を、株式を買い占める形で買収するというのは、日本人の気質にはなじまないものがあるかと思います。 ただしホリエモンや、今、株式市場で話題になっている村上ファンドの代表などは、我々の買収は海外の資本に日本の資産がドンドン取られてしまうのを防いで いるんだと言っています。
これはどういうことかというと、例えばバブル崩壊で、銀行・証券・流通・建設など、日本の多くの有力企業が倒産しました。日本はバブル崩壊後の後遺症が大きく、立ち直るのが遅かったため、次々と外資系企業に、日本の資産が安い値段で買われてしまったのです。 日本長期信用銀行、山一證券など、金融界を代表する企業は、アメリカの投資会社等に二束三文の値段で売却され、結果的に日本は大損。その他、ゴルフ場やリゾートなど、不振に陥ったところは、体力の十分残っていた外資系企業に、根こそぎ持っていかれてしまいました。
ただライブドアが、外国から日本を救うために、買収を繰り返していたのかどうかははっきりしません。ましてや、投資事業組合を利用した不明瞭な子会 社化、買収を材料に株価を不正に吊り上げ、ライブドア自体が儲かる仕組みを作っていた以上、海外資本から日本企業を守るためと言っていたことは、単なるき れいごとといわれても仕方ないでしょう。
また、先ほどの話に戻りますが、ライブドアのおかげで、株式市場に個人投資家が増えたことは認めますが、逆に、個人投資家が多くなっていたライブドアの株主が、今度の事件で株価が8分の1程度下落し、大きく損害を被ったことも事実です。
ある新聞記事によると、ライブドアの株主は、高校生や中学生、さらには小学生もいたようです。その新聞記事になっていたある小学生は、昨年ライブド アの株主になり、12月(冬休み)中に行われた株主総会に参加、ホリエモンの話を聞いて、ますますファンになり、今年になってさらにお年玉をつぎ込んでラ イブドア株を買い増ししたそうです。 その直後に例の事件。せっかく将来、投資家になってくれるはずの少年が、この事件でどれだけショックを受けたことか・・・。期待が大きかっただけに、ホリ エモンの裏切り行為は日本の株式市場を始め、多くの投資家、それもライブドア(ホリエモン)ファンになってくれていた若者の信頼を裏切ったことになるので す。
そして、今回の捜査理由となっている「風説の流布」「証券取引法違反」という犯罪についてですが、罰則規定自体はそれほど厳しいものにはなっていま せん。ただ、今までの事件と違って、今回のライブドア事件は、かなり悪質で、単に私利私欲を満たしたいための事件に思えてなりません。
例えば、今まで粉飾決算をしたケースでは、日本債券信用銀行や鐘紡などが記憶に新しいところですが、どちらも前任者の粉飾を引き継いでしまい、その
まま粉飾決算を隠し続け、ある程度進行した時点で明るみになるという形になっています。また、粉飾を行ってしまった理由が、基本的に会社存続ため、つまり
決算を装うことによって会社が潰れないようにしているのです。
すなわち株主を守るため、さらには従業員やその家族の生活を守るために行われたものであり、単なる経営者の私利私欲のために行われたものではなかったのです。
しかし今回のライブドアの粉飾決算は、単にライブドアの株価を上げるため、もっと極端に言ってしまえば、株式市場や株主を裏切り、決算を粉飾してまで経営を拡大し、買収を続けるために行われた、ライブドア経営者の傲慢な犯罪だったのではないでしょうか?
ホリエモン他、ライブドアの旧経営陣のような経営者が、他に二度と出てこないことを望みつつ、今後の捜査の展開を見守っていきたいと思います。
