サッカーフィールドのMen in Black
「こら!レフェリー!メガネ付け忘れとるんか!」
観客は声を大にして叫んだ。
「まあ、父はコンタクトなんですけどね」
私は礼儀正しく返答した。
父はプロのサッカーレフェリーである。
私は小さい頃から、地方の試合会場やテレビでレフェリーを努める父の姿を見て育ってきた。父は常にフェアであることで知られていたが、大変熱狂的なファンが腹を立てて父の判定に不満を言っていたことを今でもよく覚えている。
彼らの罵りがどんなにひどく醜く卑劣であったか、ちょっとここでは書き表せないが(笑)
父が今年のドイツワールドカップを観る時、テレビの前で叫ぶその他大勢と全く同様になることは間違いない。しかし、前回大会での論争から判断するに、レフェリーの判定に対してまた大規模な抗議が出てくるだろう。
2002年日韓大会の悪夢
FIFAはレフェリーに向けられた厳しい批判にいまだ苦しんでいる。事実2002年大会はワールドカップ歴史上最も物議を醸したジャッジが多発した大会であった。サッカーの神様「ペレ」は、同年東京でのスピーチで 「こんなミスジャッジの多い決勝戦など見たことがない」 とこぼしたという。韓国の劇的な逆転勝利で幕を閉じた対イタリア戦では、最後のロスタイムに貴公子「フランチェスコ・トッティ」が退場させられる場面があったが、これは収拾付かない論争を起こす結果となった。
他の試合では、勢いのついたアメリカが対ドイツ戦でのゴールをレフェリーの判定でノーゴールにされている。
アメリカはこれ以後戦意を喪失してドイツに敗れ、大会から退いている。
むろん、韓国・ドイツ両国は勝ち進んで行くに見合う素晴らしいチームではあった。しかしながら過酷な状況下での試合進行において、レフェリーのたった一つのジャッジが試合の流れを覆す原因になることを忘れてはならない。
レフェリー−その存在の大きさ
「ベッカム」や「ロナウジーニョ」などのスター選手に比べて、「ピエルルイージ・コリーナ」(イタリア)や「ブライアン・ホール」(アメリカ)といったトップレフリーの名はおそらくあまり多くの方々には馴染みがないだろう。 しかし、黒いユニフォームを身に纏った男たちは−試合の結果に対する影響力という点で−スター選手達と同じくらい強大な力を持っている。 かつて「ブライアン・ホール」はふざけながら母親に 「もしおれがミスジャッジでもしたら、かあさん命が危ないね。」 と言ったが、それに対して彼女は 「ぜんぜん平気よ。あんたの母親だなんて言いやしないから!」 と笑って答えたという。果たして今後の展開は?
FIFAは困難な判定を再確認するためにビデオ・リプレイを導入するべきである。 野球、ホッケー、オリンピック等他の主要なスポーツで既にそうしているではないか。スポーツアナリストはそう提案している。 しかしながら、FIFAは人間による判断に勝る技術の導入に対して断固として拒否し続けている。 プロスポーツは、伝統と現代の先端技術のせめぎ合いの中、常に難しい問題をはらんでいるのである。2002年大会以降、FIFAトップ層でさえレフェリーの質に対する増大する不安の念を隠せずにいる。
しかし少なくとも当面のところ、ワールドカップの試合会場では、レフェリーとラインズマンが判定において最終決定権を握っている−たとえそれが人間の脆さを呈する結果になろうとも。
さて、今年のドイツワールドカップも間もなくだが、もし観戦中レフェリーの判定に納得できなかったら、いっそテレビに向かって叫んでみてはどうだろう。
むろんレフェリーはそんな声は聞こえちゃいないだろうが・・まあ少なくとも気分はスッキリするだろう(笑)
多くの熱狂的なファンに混じって、あなたも同じことを言うかもしれない。
「あのバカなレフェリー、いったいどこにメガネ忘れやがった?」

