東南アジア華人社会の民間信仰
東南アジア華人社会の信仰には多彩なものがある。
もともと華人社会には儒教・道教・仏教をひとつとする三教合一という考え方がある。そこから派生した民間信仰として有名なものに媽祖信仰がある。媽祖とは海難事故から身を守る女神である。媽祖廟を建て、そこに媽祖像を祭る。福建省や台湾が本場だが、最近、横浜の中華街にも媽祖廟が建てられ、観光のスポットにもなっている。
また三国志の英雄関羽を祭ったのが関帝廟である。関羽を信じれば、戦争で勝つといわれ、そこから転じて商売繁盛の神として中国、東南アジアで広く信仰されている。横浜の中華街、神戸の南京町にも関帝廟がある。
東南アジアにはキリスト教、イスラム教やヒンドゥー教などの信徒も多く、華人社会ではこれらの影響を受け、三教にキリスト教とイスラム教を加えた五教合一という考え方が生まれた。
1983年にインドネシアのある教会を訪ねたところ、その配布物に「儒教・仏教・道教・イスラム教とキリスト教の道理は同じである」という趣旨が書いてあった。
インドネシアの9割はイスラム教徒であるが、華人社会ではキリスト教徒が多い。といっても教会を華人のコミュニティーの場としている傾向が強い。
90年代までインドネシアでは華人に対する締め付けが強く、中国語使用も禁止されていた。
教会が政治集会の隠れ蓑になることはよくある。シンガポールでも昔、ある教会が摘発されたことがあった。
私が訪問した教会の聖書は香港で編纂された福建人向けの中国語版で、何と巻末に「特別篇国家」とあり、中華民国や孫文を讃える詩文がつづられていた。「やはりそうか」私の直感は当たった。
滞在中、福建人のある家を訪問したところ、壁に孫文や蒋介石の写真が貼ってあった。
まさか聖書に孫文讃歌があるなんて神さえも知らぬことだ。アーメン!

