国際機関OECDから見た日本の所得格差問題
日本の貧困層比率が先進国中2位、というショッキングな結果が経済協力開発機構(OECD)から公表されました。新聞等でご覧になって驚かれた方も多いでしょう。今回は、この報告を取り上げ、日本社会の問題点を提示いたします。
OECDの発表は、OECDが日本経済の現状を分析した『対日経済審査報告書』によるもので、全6章からなる報告書のうち1章を割いて日本国内の「格差問題」を分析しています。報告書によると、すでに2000年段階で日本の所得格差はアメリカに次いで2番目に高く、それ以降、格差が固定化している傾向が見られ、包括的な対策が必要だとしています。
報告書が注目した指標は、生産年齢人口(18歳以上65歳以下)の相対的貧困率です。これは、可処分所得が全体の中央置(真ん中)の半分に満たない家計の割合を示すもので、この数値が高いほど、貧富の差が激しいことが見て取れるとされています。ちなみに1990年代には11.9%だった日本の相対的貧困率は、2000年段階ではアメリカの13.7%に次いで2位の13.5%に上昇し、他のOECD加盟国に比べ、日米が突出した形になっています。
このような格差が生じた原因は何でしょうか?
OECDでは、日本企業が景気低迷を背景にリストラを進めていたため、正規労働者が減少し、賃金が安いパートなどの非正規労働者が増え、労働市場の二極化傾向が強まったことを主要因とみています。10年前には全労働者の19%に過ぎなかった非正規労働者割合は、現在30%以上になっていますが、パートタイム労働者の時間当たり賃金は平均してフルタイム労働者の40%に過ぎません。その一方で、非正規労働者から正規労働者になる割合は低いままとなっており、このままでは二極化が固定化するおそれがあります。報告書はこのような日本の状況が問題であると指摘しているわけです。
日本国内ではときに「働き方の多様化」というように肯定的に捉えられることもある労働市場の二極化ですが、問題の根は深いといえるでしょう。
では、これ以上の格差の拡大を防ぐにはどうすればいいでしょうか?
報告書では、非正規雇用者への社会保険の適用拡大といった労働市場の二極化の緩和策や低所得層への社会保障の拡充を提言していますが、それらに加えて「教育」の重要性を指摘しています。報告書では、日本の教育環境について、民間機関による補習(学校以外の塾等)に費やされる費用が増加しながらも国際的な標準テストにおける日本の生徒の成績が低下傾向にあると厳しく分析しつつ、そのような中で格差を固定化しないためには、低所得家庭の子どもにも質の良い教育へのアクセスが十分確保されることこそが重要であるとしています。「ゆとり教育」がもたらした負の面をついた指摘といえますし、今後の教育のあり方を考えるうえで無視できない内容であるといえるでしょう。
以上でお分かりのように、報告書の内容は、「労働市場の二極化」、「教育改革」と日本国内でも賛否両論の形で議論されている事柄が中心です。これは、真新しさこそないかもしれませんが、改めて国際機関の視点で提示されると、問題の深刻さを推し量ることができるのではないでしょうか。
注:経済協力開発機構(OECD)とは?
1948年に第二次世界大戦後の疲弊した状態にあったヨーロッパ経済を復興するため、アメリカが提案したマーシャル・プランを受け入れる体制を整えるために設立された。所期の目的を達成すると、国際経済全般について協議する場へと変貌し、現在は日本を含む30ヶ国が加盟している。「先進国クラブ」と揶揄されることがある。

