[時事問題【国内】] 国内時事問題考察

アドバイザー:植松 和宏 / 行政書士・LEC専任講師

 

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靖国神社とA級戦犯

 2006年8月15日の終戦記念日に,小泉首相は首相就任時の公約どおり,靖国神社を参拝しました。これを受けて,予想どおり国の内外から非難の声が上がりました。小泉首相は内閣総理大臣に就任してから毎年靖国神社を参拝していますが,そのたびに中国や韓国は遺憾を表明してきており,これが中韓との政治的交流が冷え切った要因のひとつと考えることもできるでしょう。
 また今回の参拝の直前には,昭和天皇が靖国神社を参拝しなくなった理由は,A級戦犯が合祀されているからであるというような内容のメモが公表されていたこともあり,世間の関心は例年以上に高まっていました。こうした中で事の問題は,A級戦犯の合祀であるとか,憲法が保障する政教分離原則に反するとか,いろいろな意見が飛び交っております。
 しかし,要領を得ない説明が多く,結局のところ「A級戦犯という重大犯罪人が,国に殉じた功労者と一緒に祭られていることは問題である。中国や韓国は第二次世界大戦で日本に占領されたので,戦争責任者であるA級戦犯を含めて首相が詣でるのは気にくわないだろう。しかし,日本では死者はすべて神仏になるという多神教の国家であり,他の宗教のように絶対神のみではないのだから,そのあたりの宗教観を理解してもらわないと困る。まあ,政権交代によって参拝が減れば関心も低くなるだろう。」などというのが,もっともらしい意見として認識されています。

 A級戦犯とは,第二次世界大戦後の極東裁判において「平和に対する罪」について有罪判決を受けた戦争犯罪人を指します。A級のAとは,極東国際軍事裁判所条例5条イがアルファベット順で「a」となることに由来しており,罪の軽重を示す意味ではありません。したがって,刑の重さによってランク付けされたものではないので,B級戦犯(指揮・監督にあたった将校・部隊長)やC級戦犯(捕虜の取り扱いにあたった者)に比べ特に重大な責任がある者ということではありません。

 一方,靖国神社は,明治維新や戊辰戦争など国のために生命を落とした者の霊を慰めるための施設として,明治2年に明治天皇が東京招魂社を設立し,これが後の靖国神社となりました。しかし,「官軍」の殉死者は合祀するものの,「賊軍」は合祀されないなど,国家の礎となった者すべてを祀っているわけではありません。この合祀者の名簿は,もともと陸軍省や海軍省が行っていた祭神名簿作成を引き継いだ厚生省によって作成されていました。A級戦犯の名簿も,1966年に厚生省によって靖国神社へ送付され1978年に合祀されることになりました。

 靖国神社参拝やA級戦犯合祀がよいか否かは個人の判断にお任せしますが,これを判断する材料として,A級戦犯や靖国神社とはそもそも何なのか,ということを理解しておいてください。もともと,靖国という名称は「国を安らかでおだやかな平安にして,いつまでも平和な国につくりあげよう」という願いが込められているそうです。その靖国神社を舞台にして,過激な論争が繰り広げられているのは,何とも皮肉なことです。今後は,A級戦犯の分祀案や代替追悼施設建設案をはじめ,多くの対策がでてくると思われますが,問題の根本をしっかりと理解しておきましょう。

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