王子製紙のTOBを日本製紙、阻止を表明〜TOBとは何か?〜
2006年8月上旬,製紙業界のTOBの話題でマスコミが賑わっています。
わが国の製紙業界は,王子製紙と日本製紙の2社だけで連結売上高1兆円を超え,3位以下を大きく引き離していました。
ここで,業界の首位を走る王子製紙が業界6位の北越製紙に敵対的TOBをかけようとしたことがニュースとなったのです。
それを,業界2位の日本製紙が王子製紙によるTOBを阻止すること表明してから,資本提携する関連企業を巻き込んで話題が大きくなりました。
最近の日本では,企業のM&A(企業の買収・合併)が増加しています。
こうした背景には,バブル崩壊後の企業のリストラ(再構築)があったことも事実ですが,近年では業界再編を踏まえた経営戦略の一環という意味合いが強いような気もします。
このM&Aの一環として使われるTOBですが,「敵対」とか「阻止」とか,あまり平和的ではない語句が並んで使われることが多いようです。
では,そもそもTOBとは何でしょうか。
TOBとは,take-over bid の頭文字をとった略称で,「株式公開買付」のことです。
つまり,ある企業の株式を大量に取得したい場合に,マスメディアなどを使って一定価格で一定期間に一定株数を買い取ることを表明し,不特定多数の株主から一挙に株式を取得する方法のことをいいます(証券取引法27条の2参照)。
近年では,ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株をめぐる攻防でも,TOBが話題になりました。
このTOBには,友好的なものと敵対するものの2種類があります。
友好的なTOBとは買収される企業が買収に協力的なケースで,合併やグループ企業を子会社化する際に利用されます。
従来の日本では,こうした友好的な企業買収は度々行われてきました。
一方,敵対的TOBとは,上場している対象企業の経営者や取締役会の意思に反して,一方的に買収を宣言する場合をいいます。
これは,単に当該会社の経営権を取得することだけを目的として,合法的に「乗っ取る」ことともいえます。
TOBでは,株式の取得を東京証券取引所など通常の株式市場の外で行いますが,これは自らの「買い注文」によって株価が上昇してしまうことを防ぐためです。
TOBは公表した買付価格で買うため,資金計画が容易になるメリットがあります。
さらに,自ら指定した期限までに買付予定数の株式が集まらなかった場合は,株券を返却してキャンセルすることができますので,買付に失敗した時のリスクもありません。
こうした敵対的TOBは,アメリカではさかんに行われましたが,最近では欧米化された日本の経営者もこの手法を使うようになってきました。
わが国では2005年に証券取引法が改正され,敵対的TOBを防ぐための方法が緩和されました。
M&A先進国であるアメリカでも,敵対的TOB対抗策として,ポイズンビル(被買収企業が既存株主に対し,時価を大幅に下回る価格で株式を引き受ける権利を既存株主に与え株式価値を下げること)や,ホワイトナイト(友好的な第三者に株式を購入してもらい,敵対的買収者に対抗すること),クラウンジュエル(敵対的買収が発生したとき,買収の動機を希薄にさせるために優良資産や優良事業を処分してしまうこと)などが講じられるようになっています。
利益の追求や事業の拡大・効率化のみを追及するのでは,「尊敬される企業」とはいえませんが,TOBを仕掛けた企業が今後どのように社会的責任を果たしていくのか,気になるところです。
今日では,まだ企業の再編が終わったとはいえない状況ですので,今後もTOBなどの動きはあるかもしれません。
単に,金融関係用語としてではなく,社会全体の評価という点から見ていくと,面白いと思います。

