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知られざる世界遺産大国 ポーランド

クラクフ旧市街6月から7月にかけてサッカーのワールドカップが開かれたドイツ。その東に位置するのが今回取り上げるポーランドです。西と東をそれぞれドイツと旧ソ連という大国に挟まれているという地理的な要因もあって,歴史上幾度となく他国の侵略に遭い,国自体が消滅したことさえあります。しかし,その文化・芸術は現代まで力強く生き抜き,世界中の人々を魅了しています。ただ,ヨーロッパでこそ観光大国として高い評価を得ているポーランドですが,日本ではほとんど知られていません。私自身もさほど注目していたわけではなく,実際,初めてドイツを訪れた6年ほど前も,ドイツ東部に位置する現在の首都・ベルリンに立ち寄った際,「ここまで来たんだから,もうちょっと東に行って,ついでにポーランドにも寄ってみるか」といった軽い気持ちしかありませんでした。

クラクフ・聖マリア教会と中央市場広場 結局そのときは,時間の都合もあり,ポーランドへは行かなかったのですが,昨年の旅行でポーランドの南東に位置するウクライナを訪れたので,東ヨーロッパを北上する過程でまずはポーランド南部の街・クラクフを訪れてみることにしました。

ポーランドは第二次世界大戦でナチス・ドイツに占領されたこともあって,中世から残っていた建築物が破壊されてしまった街が多いといわれていますが,クラクフは皮肉にも,そのナチス・ドイツの司令部が置かれていたために戦禍を免れ,数百年前の風景がオリジナルのまま残っている貴重な街です。市内中心部にあるほぼ正方形の中央市場広場は,1辺が約200メートル,サッカー場の約5倍の大きさがあり,ヨーロッパの都市部にある広場では最も広いと言われています。古い建物が連なる道を進んで広場に出ると,その開放感はすばらしく,聖マリア教会をはじめとした歴史的な建物に囲まれた広場にはオープンエアのカフェが建ち並び,あちらこちらに鳩が舞い,なんだか天国にでも来た気分になります。

アウシュビッツ強制収容所 中世の街並みとしてヨーロッパ一美しいと言われるチェコのプラハにも一歩も引けを取らないばかりか,中央市場広場の壮大さを考えると,この広場こそヨーロッパ一とも言ってもいいほどの美しさです。クラクフ自体も世界遺産に登録されていますが,クラクフから日帰り圏内に二つの世界遺産があります。

その一つは,日本の広島にある原爆ドームとともに「負」の世界遺産として知られるアウシュビッツ強制収容所です。第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって建設されたこの強制収容所では,100万人以上のユダヤ人らが組織的・計画的に殺害されたとされます。強制収容所の敷地には,小学校の校舎のような収容棟が20ちょっと整然と並んでいるほか銃殺場,遺体の焼却炉,ガス室で使われた青酸ガス・チクロンBの空き缶の山などを観て歩くことができます。

ビルケナウまた,アウシュビッツ強制収容所から連絡バスで5分ほどのところには,さらに大きな強制収容所のあるビルケナウがあります。アウシュビッツの収容所よりこちらのほうが規模は遙かに巨大で,収容する人々を運んだ列車が敷地内に入れるように,列車の引き込み線まであり,当時の恐ろしさを現代に伝えています。

もう一つが,クラクフの南東へバスで30分ほどのところにあるヴェリチカ岩塩採掘場跡です。この世界遺産のすごいところは,20世紀中頃までの約700年間に渡って掘り続けられた地下採掘場に,礼拝堂や数々の彫刻品などがあることです。

ヴェリチカ岩塩採掘場跡 そして驚くべきことに,これらの作品のすべてが岩塩をくりぬいて造られていること。特に,学校の体育館よりも大きいと思われるような礼拝堂には,これまた岩塩から造られたシャンデリアがぶら下がっているほか,岩塩を彫って造られた数々の宗教画が掲げられており,観る者を圧倒します。

クラクフ観光を終えて列車で向かったのがポーランドの首都・ワルシャワです。ワルシャワは,第二次世界大戦末期の1944年,当時街を制圧していたナチス・ドイツ軍に対して市民が一斉蜂起した際に,中世から残っていた街並みのほとんどが破壊されてしまったそうです。しかし,戦後すぐから市民たちが当時の記録などを元に「壁のひびの1本まで忠実に」復元し,見事に以前の街並みを取り戻しました。そんなポーランド人の心意気もあって,ワルシャワの旧市街は1980年に世界遺産に登録されています。観光スポットの中心地,旧市街市場広場は,四方がカラフルな建物で取り囲まれているほか,近くには,ラジウムの発見や研究などでノーベル賞を2度受賞したキュリー夫人の生家もあります。

ワルシャワ・旧市街市場広場 ポーランドは,日本からの直行便がないためアクセスがあまり良くないことや,近隣に既に日本人に人気のある国が多いことから,日本では観光地としての知名度はさほど高くはありません。しかし,今回取り上げた街以外にも多くの世界遺産があり,他のヨーロッパの観光大国に匹敵しうる,一度は訪れる価値のある国です。

写真1枚目:クラクフ旧市街

写真2枚目:クラクフ・聖マリア教会と中央市場広場

写真3枚目:アウシュビッツ強制収容所

写真4枚目:ビルケナウ

写真5枚目:ヴェリチカ岩塩採掘場跡

写真6枚目:ワルシャワ・旧市街市場広場

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