惑星は本当に8個?IAU決定とその波紋
1990年代以降,海王星以遠で新天体が数多く発見されるようになり,惑星の定義について検討をする必要が出てきました。2005年には,冥王星よりも大きいとされる天体も発見され,惑星の定義を確定させるべきだという議論がより活発となりました。そして今回,IAU総会において,惑星の定義についての決議が行われたわけです。当初,「惑星とは,恒星の周りを回り,十分大きな質量を持つので自己重力が固体に働く種々の力を上回って重力平衡形状(ほぼ球状)を有する,恒星でも,惑星の衛星でもない天体」とされました。この定義によると太陽系の惑星は12となります。しかし,この案では惑星が今後も増え続ける可能性があり,定義の修正が求められていました。
その結果,上記の定義を修正し,以下のような定義が採択されることになりました。
太陽系の惑星とは,(a) 太陽の周りを回り,(b) 十分大きな質量を持つので自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほぼ球状)を有し,(c) 自分の軌道の周囲から(衛星を除く)他の天体を排除してしまった天体である。
この決定により,冥王星は惑星の定義がからはずされ,dwarf planetという新たな範疇に入れられることになりました。dwarf planetの訳語はまだ確定していませんが,「矮小惑星」あるいは「矮惑星」と訳されているようです。dwarf planet は,惑星とは上記定義の(a) と(b) は共通しますが,最後が異なり,以下のように定義されます。
dwarf planet とは,(a) 太陽の周りを回り,(b) 十分大きな質量を持つので自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほぼ球状)を有し,(c) 自分の軌道の周囲から他の天体を排除しきれておらず,(d) 衛星でない天体である。
これで今後惑星数は8ということで一件落着と思われましたが,この決定は今後変更されるかもしれません。というのもというのも,今回の決定は確かにIAUの総会で採択されはしましたが,IAU会員は約9,000人いるにもかかわらず,今回の決定はその5%未満の428人しか投票に参加していないことなどから,その有効性に疑問が投げかけられているためです。
冥王星発見者C.トンボーの母国アメリカからは,航空宇宙局(NASA)の冥王星探査機「ニューホライズンズ」の主任研究者アラン・スターンらが「惑星科学者や天文学者としてIAUの新定義に同意せず,使用もしない」とする陳情書をインターネットに載せたところ,数日間で300人以上が署名したと発表したり,「冥王星がまだ惑星だと思うならクラクションを鳴らせ(Honk if Pluto is Still a Planet)」という自動車用のバンパーステッカーがインターネット上で売り出されたりしています。
さらに,今回の惑星の定義(c) の「自分の軌道の周囲から(衛星を除く)他の天体を排除してしまった天体」を適用すると,地球や木星も惑星ではなくなるという反対論もあります。つまり,地球の軌道上には1万ほどの「地球近傍小惑星群」が存在していますし,木星に至ってはその軌道上に10万ほどの「トロージャン小惑星群」を伴っています。これらの存在と今回の定義は抵触するというわけです。
どうやら,惑星を8個だと結論付けるには,まだ時間がかかりそうですね。

