雨の話をすると雨が降る?
最後に、リスク分析の実践について、お話したいと思います。
たとえば、仲のいい友達で、ピクニックにいくとします。前の晩に、準備をしていると、A君が「あ、雨傘もいるよね。雨が降ってきたら困るから」と言いました。そこで、みんな折りたたみ傘をナップザップに入れました。翌日、山道を歩いていると、ポツリポツリ雨が降ってきました。そのとき、あなたは、「昨夜、A君が雨の話などするから雨が降ったじゃないか」とは言わないでしょう。雨が降っても、雨傘を持っているのですから、A君に感謝することはあっても、恨む筋合いは全くありません。
ところが、実際には、日本の社会では、何か物事を行おうとするとき、リスクを分析しようとすると、「おいおい、縁起でもないことをいうなよ」などという上司がいます。このように、何か口に出すとそれが本当になってしまうという発想を「言霊思想」といいます。この「言霊思想」こそリスク分析の敵です。リスクを分析するときには、このような非論理的な考えに負けることなく、勇気を持って、リスクを洗い出したいものです。
また、リスク分析には、正確な情報が前提となります。そのためには、耳に痛いような情報もオープンにする必要があります。日ごろの風通しの良さがものを言います。部下たるもの、上司に包み隠さず報告する必要がありますし、上司もそれを嫌がってはいけません(少なくとも表面上は)。上司に、いい面だけ報告だけしていて、最後にどうにもならなくなって、上司が驚くような報告をするような愚は避けたいものです。
そして、リスク対策の実施においては、すべてのリスクに施さなければならないというものではありません。発生する可能性が極めて低いことや、発生してもその影響が極めて少ないことには、思い切ってリスク対策を実施しない勇気も必要です。経営資源は無限にあるものではないからです。
的確なリスク分析を行えば、不安感からも解放されます。正しいリスク分析をして、積極的に仕事に取り組むようにしましょう。

