世界遺産以外に見所がある? バルト三国 リトアニア編
私が大学に入学した1991年当時、世界の話題といえば、冷戦の崩壊でした。1991年に旧ソ連が崩壊し、連邦を構成していた各共和国が次々に独立を果たしました。 そんな中、バルト三国の独立は旧ソ連邦崩壊の代名詞のように報道され、当時の私の頭にも、「バルト三国」という名はしっかりと刻み込まれていました。 しかしその後は、バルト三国という名称をマスコミ等で見聞きすることはあまりなく、私の頭の中からもほとんど消え去っていたのですが、2004年5月にEUに加盟したとのニュースが報道されたのをきっかけに調べてみると、バルト三国の首都はすべて世界遺産に登録されていることが判明。世界遺産と聞くとやはり興味をそそります。昨年の旅行ではリトアニアのお隣・ポーランドまで行ったので、バルト三国にもついでに行ってみることにしました。
バルト三国とは、リトアニア、ラトビア、エストニアの三国を指します。第二次大戦中に旧ソ連に併合されましたが、1991年にようやく独立を回復しました。 一口にバルト三国といっても、その辿ってきた歴史はかなり異なり、民族にも差異が見られるようです。上述のように、バルト三国の首都の旧市街はすべて世界遺産に登録されていますが、その歴史の違いからか、雰囲気もかなり異なっていました。 私が最初に訪れたのは、リトアニア第二の都市・カウナスです。現在ではリトアニアの首都はヴィリニュスですが、1920年から第二次世界大戦終了までは、ヴィリニュスがポーランドに占領されていたこともあって、カウナスが首都となっていました。 カウナスといえば「杉原千畝」という人物を思い浮かべる方も多いと思います。杉原千畝氏は、第二次世界大戦中、リトアニアの首都であったカウナスに置かれていた領事館に領事代理として赴任していた際、カウナスの日本領事館にナチス・ドイツによる迫害から逃れようとしてやってきたユダヤ人たちに、自らの意思を貫き、日本外務省の意向に背いて、日本の通過ビザを発効し、6000人以上のユダヤ人の命を救った人物です。 当時の領事館は、現在は杉原記念館となっており、私が訪れたときにも、彼の生い立ちや功績についての展示やビデオを見ることができました。杉原記念館は、カウナス駅近くの小高い閑静な住宅地にあるのですが、こんな静かなところに「命のビザ」を求めてユダヤ人が殺到したという歴史があったことを考えると、簡素な領事館の建物にも歴史の重みを感じます。
杉原記念館以外のカウナスの観光スポットは、鉄道駅から徒歩20分程度のところに位置する旧市街に集中しています。旧市街は中世から続く建物が並んでいて非常にのどかな雰囲気。この街が一国の首都であったということを忘れてしまうほどです。
ちなみに、私がカウナスで宿泊したホテルは、杉原氏が領事館を追われて一時滞在したというホテルでした。旧市街と鉄道駅の間にあるこのホテルは戦前から続く古いホテルだそうです。たしかに新市街に位置するこのホテルは、他の建物よりも古びた感じがあります。杉原氏が宿泊したことがあると知って、ちょっと得?した気分でした。
カウナスに1泊した後に列車で向かったのがリトアニアの首都・ヴィリニュスです。 ヴィリニュス駅に到着し駅構内を出ると、目の前にある街の規模の小ささに少しびっくり。一国の首都とは思えないほど小さな街でした。ヨーロッパの街は,鉄道駅周辺に新市街と呼ばれる近代的な街があって、少し離れたところに昔から残っている旧市街がある、というパターンが多いのですが、ヴィリニュスは、駅前からして高層ビルの類はまったくなく、拍子抜けしてしまいました。
駅近くに安宿を見つけて荷物を置き、まず向かったのが、バスで1時間弱のところにあるトゥラカイという保養地です。ここにはトゥラカイ城という、14世紀後半に建てられたお城(現存のお城は再建されたもの)があることで有名です。
トゥラカイにはいくつか湖があり、その中の小さな島にトゥラカイ城は建っていました。遠くから見ると、お城が湖に浮かんでいるように見え、非常に綺麗です。私が立ち寄ったときは時間帯も遅かったせいもあってか人もまばらで、辺りは非常に静かでした。お城はしんと静まり返り、周りを囲む湖水と合わせて神秘的な雰囲気が漂っています。なんでもこのトゥラカイ城とその周辺の湖は、リトアニアで次に世界遺産に指定されるところはどこか?という質問では、真っ先に挙がる場所なのだそうです。
トゥラカイを後にしてヴィリニュスに戻ってくると既に夕方。急ぎ足で世界遺産にも指定されているヴィリニュスの旧市街を観光しました。
ヴィリニュスという街、確かに街並みは綺麗で、個人的に好きなゴシック建築の教会もあったりと、それなりに楽しめるのですが、なんとなくインパクトに欠けるような・・・というか、世界遺産に指定されている旧市街というと、建物自体に非常に歴史を感じさせるところが多く、街全体で歴史を語るような雰囲気のところが多いのですが、ヴィリニュスはなんだか雰囲気的に垢抜けて?いて、あまり古さを感じさせない街という印象でした。私自身は、古い建物がそのままの状態で軒を連ねているような街並みが好きなので、そういった向きとはちょっと合わないかな?というのが正直な感想でした。一方、期待以上に良かったのが、現在ではまだ世界遺産に指定されていないトゥラカイ。湖を横切り、神秘的な空間に忽然と現れるトゥラカイ城には一度行ってみる価値はあります。

