CD一枚で印税はどれくらい貰えるの?
皆さんは、今までで最高売上のCDアルバムは何か、ご存知でしょうか。答えは、宇多田ヒカルさんが1999年3月に発売したファーストアルバム、「First Love」です。既に、700万枚以上の売上げを記録しており、CD売上げの日本記録を更新中だそうです。
さて、今回は、宇多田ヒカルさんのケースを一例に挙げながら、印税の仕組みについて分かり易く説明します。
ただし、具体的な契約内容は決して世の中に公表されませんので(野球選手の年棒と一緒で、絶対に明かさないことが契約する上での約束になっているようです)、正確な印税額を知るのは不可能です。ですから、あくまで一般論である点を予めご了承下さい。
まず、下のフロー図を見てみましょう。ここで登場するのは、著作物を創作した「著作者」(例えば宇多田ヒカルさん)、著作権を総合的に管理する「音楽出版社」(例えば東芝EMIの関連会社)、実際にCDの製造販売をする「レコード会社」(例えば東芝EMI)、そして、著作権使用料の徴収をする社団法人日本音楽著作権協会、通称「JASRAC」(Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers)、の四者です。
話を分かり易くするために、CDは著作者の作詞・作曲による曲だけで構成され、1枚3000円とします。また、説明文の文頭に付けた番号は、下のフロー図の番号と対応させていますので、照らし合わせながら読んで下さい。

(1) 作詞・作曲した人を、音楽の著作物を創作した者という意味で、法律的には「著作者」と呼びます。著作者には、財産権としての性格を有する「著作権」が自動的に発生します。そして、著作者は、音楽出版社と著作権契約を交わし、この著作権を音楽出版社に譲渡します。と同時に、印税を受け取る約束をします。こうして、著作権を譲り受けた音楽出版社は、著作権を保有する者という意味で、法律的には「著作権者」となります。
(2) 著作権者となった音楽出版社は、スタジオを借りる等して、CD化するための本格的なレコーディングを行います。これにより完成した原盤のことを、マスターテープと呼びます。その後、CD工場をもっていない音楽出版社は、このマスターテープをレコード会社に渡します。レコード会社は、受け取ったマスターテープを大量コピーして(CD化して)、完成したCDを市場で販売します。
ちなみに、上述したレコーディングには、スタジオ使用料や録音機器使用料など、莫大な費用(例えば1000万円程度)が必要になるため、音楽出版社は、レコード会社からCD売上げの一部を原盤印税として受け取ります。したがって、CDが売れないと、音楽出版社は、原盤印税によってもレコーディング費用を回収できないことになります(つまり、音楽出版社は赤字になります)。
(3) 一方で、音楽出版社は、著作者に印税を支払えるように、JASRACに対して著作権の信託譲渡を行います。分かり易くいうと、著作権使用料の徴収を代行してもらうのです。JASRACは、TV局,カラオケ店,レンタルビデオ店,音楽配信企業,レコード会社など、様々な者に対して楽曲の使用許諾を行います。
(4) ここでは、レコード会社への使用許諾だけに着目しましょう。
(5) レコード会社は、JASRACから使用許諾を受ける(CD化して製造販売することを認めてもらう)代わりに、著作権使用料としてCD売上げの6%をJASRACに支払います。具体的には、CD1枚の売上げにつき、3000円の6%=180円がJASRACに送金されます。
(6) JASRACは、著作権使用料を徴収する手数料として、7%の金額を差し引いて、残りを音楽出版社に送金します。具体的には、180円の93%=約167円が音楽出版社に送金されます。
(7) 最後に、音楽出版社は、著作者との契約(分配比率)に基づいて、著作者の取り分を印税として口座に振り込みます。具体的には、例えば著作者と音楽出版社で折半する場合には、約167円の半分の約83円が著作者の口座に振り込まれます。なお、著作者と音楽出版社の分配比率ですが、売れっ子になるにつれて、著作者の取り分が増えるようです。
以上より、例えばCDの売上げが700万枚の大ヒットになったときの印税を計算してみましょう。約83円/枚×700万枚で、5億8100万円となります(税金は一切考慮していませんので、そのまま全額が著作者に入るわけではありません)。
なお、売れっ子の場合、分配比率が折半ということはないでしょうから、実際には、もう少し増額されるでしょう。また、(7)でいう印税は、作詞・作曲に対する印税(正確には、著作権印税といいます)ですので、自分で歌を歌っている場合には、歌唱印税(アーティスト印税)が別途支払われることになります。さらに、今回は、レコード会社への使用許諾しか考えていませんが、現実は、上述したようにTV局や音楽配信事業者など様々なところから、JASRACを介して印税が入ってくることになります。

