認知症の方に接する際の注意点〜幻覚がみえている方〜
今回は、幻覚がみえている認知症の方の話です。
Aさん(90歳)は、以前脳梗塞になったことがあり、それ以来認知症がみられます。
Aさんの夕食を作るためにヘルパーが訪問したところ、Aさんから、「そこの子たちにお菓子を出してあげて」と頼まれました。Aさんは独り暮しで、部屋の中には他に誰もいません……。
これは、私が仕事中、実際に体験した話です。Aさんには幻覚が見えているのです。Aさんに聴くと「着物を着た双子の女の子」が遊びにきている、とのことでした。私はお菓子を2つ用意して、テーブルの上に置きました。もちろん、「彼女たち」が食べてくれるわけはありません。Aさんが少々がっかりしているようだったので、「お腹いっぱいなのかもしれませんね」といって下げました。
認知症の方の中には、このように幻覚が見える、という方もいます。それが幻覚だ、とわかっている方もいるのですが、もちろん現実との区別がつかない方もいます。その場合の接し方のポイントとして、その方の言うこと、見えているものを否定しないことが重要です。上の例でいえば、お菓子を「幻覚」に対して勧めたり、「お腹いっぱいなのかも知れませんね」といった声かけを行うことが「幻覚を否定しない対応」になります。
もしここで、「女の子なんかいませんよ」と否定してしまえば、Aさんは「自分はおかしくなった」とショックを受けるかもしれません。周囲の人間が、認知症の方の見えている世界へ歩み寄ることが大切なのです。
上の例では簡単に書きましたが、実は「着物を着た双子の女の子」であることを、Aさんの幻覚を否定せずに聞き出すのには一工夫いりました。何せ、Aさんに一体何が見えているかを、「見えるふりをしながら」聴かなければならなかったので。
この場合には、「どんな〜が好きですか?」といった、選択肢をしぼらない質問方法(オープンクエスチョンといいます)が有効です。無限にある選択肢のなかから、利用者が何を選んだかによって、その後の会話のヒントになるものを得ることもできます。
介護には、時には演技も必要です。
今日のまとめ
認知症の方が幻覚に基づく発言をしても、否定をしないで対応する。

