35年ぶりに国内で狂犬病発症 〜 で,そんなに怖い病気なの?
少し前の話題ですが,2006年8月に邦人がフィリピンで犬にかまれ,日本に帰国後11月に狂犬病を発病し死亡した例が報道されていました。この狂犬病ですが,最近の日本ではほとんど聞かなくなりましたので,被害者はよほど運が悪かったのだろう,というようなマスコミの発言もみられました。
わが国では,過去に徹底した野犬対策が行われました。1950年に狂犬病予防法が制定され,同法4条では「犬の所有者は,犬を取得した日から30日以内に,厚生省令の定めるところにより,その犬の所在地を管轄する都道府県知事に市町村長を経て犬の登録を申請しなければならない」と,管理を厳重に義務付けています。さらに,野犬の処分が徹底的に実施され,また犬の予防接種も義務付けされました。こうした努力の結果,島国であることも対策に有利になり,1957年以後では患者の発生はありませんでした。そのために狂犬病は,克服された過去の病気という認識でしかなく,その脅威を理解している方は多くありません。
しかし,世界的にみると,狂犬病による死亡者は年間4万人〜6万人にのぼり,現在も世界中で猛威を振るっています。国別で被害状況をみると,インドが圧倒的に多く,最近では中国でも感染者が急増しており,必然的に死亡者数も増加しています。このように狂犬病は,人と動物が共通に感染する病気である人畜共通感染症の中でも,致死率が高くもっとも恐ろしいといわれているのです。
狂犬病はウイルス性の感染症であり感染した動物にかまれた傷口からウイルスが侵入します。人間の場合は,早ければ数日の潜伏期間を経過すると,かまれた傷口の大きさや体内に入ったウイルス量などによって発病します。ウイルスは感染者の体内で増殖し,神経を伝わって脳に移行し,中枢神経症状があらわれます。一般的には,一度発病したら有効な治療法はなく,ほぼ100%死に至ります。
2006年には,35年ぶりに国内で狂犬病患者がでたことで,狂犬病を予防するためのテクニックなどが大々的に特集されました。対策は単純なことで,予防接種を受けておくことや,しっかりと手を洗うことです。予防接種前に狂犬病のおそれのある動物にかまれたら,すぐに傷をよく洗い,速やかに病院で傷の処置と狂犬病ワクチンを接種することも対策といえるでしょう。
ただ,狂犬病は犬に関与した場合だけにみられる病気ではありません。狂犬病のもっとも大きな感染原因は犬ですが,他の哺乳動物からも感染することがあります。欧米ではキツネ,アライグマなど,アフリカではジャッカルやマングースなどからの感染が報告されています。日本にも多くいる猫や馬,牛なども感染するため,こうした動物も感染源になることがあります。
今日では,動物愛護が叫ばれ,ペットを家族同様に扱う人も増えてきました。動物愛護には大賛成ですが,そもそも人間とその他の動物は別の生き物です。当たり前のことを念頭において,まずは自らの安全と健康を確保することを心がけましょう。年末年始には,海外へ出かけられる方も多いと思いますが,行く前の予防接種と,現地での動物へのむやみな干渉には注意して下さい。

