南アメリカの動向と2人の反米大統領
今回は,かなり地味な内容になりますが,南アメリカ関係で知っておきたいことを時事報道に関連付けてみておきましょう。
ボリビア中部のコチャバンバで南米諸国の首脳が集まって南米サミット(南米国家共同体首脳会議)が開催されました。この会議は,将来的には南米にヨーロッパのEUのような共同体を立ち上げようという構想のもとに開かれているのですが,南米は地域格差も大きく,EUのような一体化は困難だといわれています。今回の会合でも,加盟国の政治・経済統合の必要性を再確認する宣言を採択して閉幕しましたが,細かい部分では各国の意見の隔たりが大きく,実質的な成果を生み出せませんでした。
このような結果になった背景には,各国同士の利害関係の対立もありますが,それ以上に深刻なのが,アメリカとの関係の持ち方です。南米では,親米といえる国々と反米といえる国々とがきれいに分かれており,この会議でも,アメリカとの自由貿易協定締結に関して,すでに締結を済ませたチリとペルーに対して,ベネズエラやボリビアは,そのようなものは民衆を破滅させかねないとして反対するなど,地域的な統一を成し遂げる障害となっているのです。
ところで,反米を掲げる国々の代表者は,どのような人物なのでしょうか?ここで,参考までにその典型的な人物を2人取り上げましょう。
まず1人目は,つい先日実施された大統領選挙において3選を果たしたベネズエラのウゴ・チャベス大統領です。支持者層は主に貧困層で,市場経済化を否定することで,民衆の不満を動因する手法は,ネオ・ポピュリズム(新民衆迎合主義)の典型例として取り上げられることもあります。最近でも,世界5位といわれる石油輸出産業の国家管理を強化するとした一方で,ベネズエラ国内で操業する欧米のメジャー(国際石油資本)に対する税率を引き上げるなど,内外から批判が多い人物でもあります。また,今年9月の国連総会演説では,ブッシュ大統領を「悪魔」と呼ぶ(注参照)など派手な反米パフォーマンスを披露したことでも注目を浴びました。
もう1人は,ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(通称ルラ)大統領です。ブラジル初の労働者階級出身の大統領であるルラ大統領も貧困層の圧倒的な支持を背景にその地位にある人物で,「飢餓ゼロ計画」を発表して,貧困家庭向けの食料援助や子弟を学校に通わせることを条件に一定額を給付するといった社会福祉・貧困対策を推進するなど,常に民衆寄りを意識した政策で知られています。また,現在アメリカが中心となって,南北アメリカを網羅する共同体FTAA(米州自由貿易地域)を実現させようという構想が進んでいるのですが,この構想に反対しているのがルラ大統領です。ルラ大統領にとれば,アメリカ主導のFTAA構想に絡め取られることなく,途上国などとの連帯を通じた途を模索しようということのようです。
(注) 今年9月の国連総会で,ブッシュ大統領が演説した次の日に,チャベス大統領は演壇に立ったのだが,そのとき,「昨日,悪魔がここにやってきた。まだ,不快な臭いが残っている」と発言して話題となった。

