ブッシュ大統領の一般教書演説
アメリカのブッシュ大統領による一般教書演説が先日上下両院合同本会議で行われました。今回はこの話題を取り上げましょう。
そもそも,一般教書演説とはどのような位置付けを持ったものなのでしょうか?
アメリカ大統領による一般教書演説(State of the Union Address)は,現在「連邦(アメリカのこと)」が置かれている状況(the State of the Union)とその年を通じた内政・外交の施政方針を上下両院に説明するもので,日本でいえば首相の施政方針演説に相当します。しかし,日本の議院内閣制とは違い,三権分立が厳格なアメリカでは,大統領は議会に議席も持たず,法案提出権も持たないため,この一般教書演説が自身の考えを議会に提示できる大きな機会となっています。また「教書」と訳されていますが,これは3代大統領ジェファーソンが1801年に演説をせずに議会に文書を送り,書記にメッセージを朗読させたことに由来しています(議会に出向いて直接演説することはイギリスの王制を連想させるというのがその理由でした)。この伝統はその後100年以上続き,大統領が議会で演説するようになったのは28代ウィルソン大統領の1913年になってからのことです。
有名な一般教書としては,5代モンロー大統領が欧州との相互不干渉をうたったモンロー・ドクトリンを発表したもの,16代リンカーン大統領が奴隷解放への望みを訴えたもの,32代フランクリン・ルーズベルト大統領が言論や信教など「4つの自由」を提唱したものなどがあります。
さて,ブッシュ大統領としては6度目となる一般教書演説ですが,民主党が上下両院で多数を占めた議会で初の一般教書演説ということもあってか,女性として初めて下院議長となった民主党のナンシー・ペロシ議長に対して「マダム・スピーカー(議長閣下)との呼びかけを最初に使う大統領の栄誉に浴します」と敬意を表すことから演説は始められました。
演説の骨子は以下のようなものです。
1 イラク関係
2万2,000人のアメリカ軍増派を柱とする新政策が,成功に向けた最善である
2 イラン関係
核開発の中止とイラクへの干渉を中止するように警告
3 テロ対策
超党派の議会指導者からなる対テロ戦争に関する特別諮問委員会を設置する
4 軍再編
5年間で陸軍と海兵隊を合わせて9万2,000人規模の増員を行う
5 北朝鮮関係
6カ国協議などによる外交的方法で核問題を解決することが重要である
6 エネルギー戦略
今後10年間でガソリン消費量を20%削減し,戦略石油備蓄を倍増する
7 その他内政問題
720万人の雇用創出や賃金上昇,減税政策,教育の充実
昨年まで5回の一般教書演説では特に外交政策に関して強気な発言が目立ちました。特に2002年の一般教書演説ではイラン・イラク・北朝鮮の3カ国を「悪の枢軸」と名指したことが世界的に大きな話題となったのでご記憶の方も多いでしょう。しかし,今回の演説ではイラク政策ではそれなりに強気の姿勢を堅持してはいるものの,イランや北朝鮮に対する政策では従来のような強気な態度は見られず,経済運営の順調さや福祉政策の充実などといった内政重視の内容となっています。
ブッシュ大統領の任期も残り2年,政権への逆風も強く,今後大きな成果は期待しにくい状況を反映した形となっているといえるでしょう。

